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時計の4が「IIII」なのは何故?ローマ数字4が「IV」ではない理由

市場分析・考察

当サイトのカテゴリーのひとつ、「考察」があるので、あなたの素朴な疑問にも回答しましょう。

高級時計を購入して、自宅で精緻な文字盤を眺めていると、ふと気になる表記があります。
4時位置のローマ数字が、「IV」ではなく「IIII」になっていることです。

学校ではローマ数字の4を「IV」と習った方が多いでしょう。だからこそ、あなたが初めて「IIII」を見たときには、「これは間違いではないのか」と感じても不思議ではありません。特に数十万円、場合によっては数百万円する時計であれば、なおさらです。

  • 「工場の印刷ミスではないのか」
  • 「中古で購入した時計だが、もしかすると偽物なのではないか」

そんな不安を抱く方がいても無理はありません。

しかし、時計の世界では「IIII」は決して珍しい表記ではありません。むしろ、長い歴史を持つ時計ブランドの多くが現在も採用している、よく知られたデザインです。

では、なぜ時計盤に刻まれた数字が一般的な「IV」ではなく「IIII」なのでしょうか。
その理由については、古代ローマに由来する説から、中世の王にまつわる逸話、そして文字盤のデザインや製造工程に関する合理的な説まで、いくつかの考え方があります。本記事では、時計の「IIII」表記について、歴史的な背景だけでなく、なぜ現在の時計にも残っているのかという視点から整理します。

【結論】時計の「IIII」は間違いではない

まず結論からいえば、時計の4時位置に「IIII」と書かれていても、それだけで誤植や偽物と判断する理由にはなりません。
「IIII」は、時計の世界では長く使われてきた伝統的な表記です。

実際、高級時計ブランドの中にも「IIII」を採用するブランドは数多くあります。ロレックス、オメガ、パテック フィリップ、ブレゲ、カルティエ、オーデマ ピゲ、ヴァシュロン・コンスタンタンなどが、その代表例です。

一方で、「IV」を採用するブランドもあります。
つまり、時計の4を「IIII」とするか「IV」とするかには、単純な正解・不正解があるわけではありません。前提を最初に理解しておくと、文字盤を見たときの違和感もかなり小さくなるはずです。

高額な時計ほど「本物なのか」が気になる

「IIII」が気になるのは、ある意味当然といえます。調べるまで、私もそうでしたから。
一般的なローマ数字では4を「IV」と表記するため、普段の知識からすると「IIII」は明らかに特殊に見えるもの。
しかも、見慣れた4でなく「IIII」が高級時計の文字盤に堂々と刻まれている。
「これで合っているのだろうか……」と一度気になってしまうと、時計そのものより4の数字に目が行ってしまうこともあります。

実際、海外の時計コミュニティでも、ローマ数字の「IIII」を見て真贋を心配する質問はたびたび見られます。
疑問や違和感を覚えるのは、「IIII」が偽物に多いからというより、一般的なローマ数字の知識と時計の慣習との間にギャップがあるためと考えたほうが自然でしょう。

「IIII」は高級時計では珍しい表記ではない

日本の大手時計リユース企業KOMEHYOが、高級時計ブランドを対象に行った調査では、「IIII」を採用するブランドが大多数を占めるという結果が紹介されています。
調査では有名な50ブランドのうち47ブランドが「IIII」、3ブランドが「IV」を採用しているとされ、割合では「IIII」が94%となります。

インデックス表記ブランド数割合
IIII47ブランド94%
IV3ブランド6%

ただし、上記の数字はあくまで対象となった50ブランドについての調査結果です。時計市場全体のすべてのモデルを調べた数字ではありませんのであしからず。
とはいえ「IIII」が時計業界でいかに一般的な表記なのかを知るには、分かりやすいデータといえるでしょう。
したがって、ロレックスやカルティエなどの時計に「IIII」が使われていても、見慣れていないから不自然だと考える必要はありません。

なぜ「IV」ではなく「IIII」なのか?

では、いよいよ本題です。
なぜ時計では「IV」ではなく「IIII」が使われるのでしょうか。
実は、これについては「これが唯一の正解」という歴史的証拠が確認されているわけではありません。
いくつかの説が伝えられており、その中でもよく知られているものが次の3つです。

1. 古代ローマの神「ユーピテル」に配慮したという説

よく紹介されるのが、古代ローマの宗教に関係する説です。
ローマ神話の最高神ユーピテル(Jupiter)のラテン語表記には「IVPPITER」という綴りがあります。
ここから、「IV」という表記を神の名前の一部と重ねて考え、時計や日時計などの日用品に「IV」を使うことを避けたのではないか、という説が生まれました。

ただし、ユーピテル説については注意が必要です。
「古代ローマ人が『IV』を神聖視したため、4を『IIII』と書いた」と断定できるだけの確実な史料があるわけではありません。
古代ローマの碑文などに「IIII」の表記が見られることは事実ですが、それが現代の時計の「IIII」につながったと一直線に説明するのは難しいところです。
とはいえ、時計の「IIII」をめぐる歴史的な逸話として、現在でも広く紹介されている説の一つです。

2. フランス国王シャルル5世にまつわる説

もう一つ有名なのが、14世紀のフランス国王シャルル5世に関する逸話です。
1370年頃、時計職人ヘンリー・ド・ヴィックがパリの王宮に設置する時計を製作した際、文字盤の「4」が「IV」となっていたとされます。
文字盤の「IV」を見たシャルル5世が、「V」から「I」を引く「IV」という表記を縁起が悪いとして、時計職人に「IIII」へ変更させたという話です。

この逸話から、王の意向を受けた時計職人たちが「IIII」を使うようになったという説明がされることがあります。

ただ、この話も史料による裏付けには慎重さが必要です。
シャルル5世ではなく、後世のルイ14世にまつわる話として紹介される場合もあります。
つまり、「王様が命じたから現在までIIIIが残っている」という単純な話ではありません。
それでも、この逸話が興味深いのは、時計の文字盤が単なる数字の集合ではなく、当時の文化や権力、縁起まで含めてデザインされていた可能性を感じさせるところでしょう。

3. 文字盤全体のバランスを整えるためという説

最後の説が、現在の時計デザインを考えるうえでは、いちばん説明がもっとも納得しやすいかもしれません。
時計の文字盤を12個の数字で囲んでみると、1〜4、5〜8、9〜12という3つのグループに分けて考えることができます。

「IIII」を使うと、

  • 1、2、3、4 → Iを基本とするグループ
  • 5、6、7、8 → Vを含むグループ
  • 9、10、11、12 → Xを含むグループ

という構成になります。

時刻表記インデックス
1〜4時I、II、III、IIII
5〜8時V、VI、VII、VIII
9〜12時IX、X、XI、XII

こうして見ると、確かに一定の規則性があります。
特に文字盤は円形です。
数字がどの位置に置かれるかによって、文字の長さや密度が視覚的なバランスに影響します。
そのため、「IIII」は単なる古い慣習として残っただけではなく、文字盤全体を見たときのまとまりやデザイン上の都合とも相性がよかったと考えることができます。時計を実際に見比べてみると分かりやすい部分ですね。

「IIII」には製造上のメリットもあった?

「IIII」が残った理由として、もう一つよく語られるのが製造工程に関する説です。
昔の時計では、文字盤に使う数字を一つずつ加工したり、鋳造したりする必要がありました。
このとき「IIII」を使うと、文字盤1枚に必要となる「I」「V」「X」の数をある程度そろえやすくなります。
特に、複数の数字をまとめて鋳造する場合には、部品の種類を減らせる可能性があります。
ここから、「IIII」という表記には生産工程を効率化するメリットがあったのではないか、という説が生まれています。

ただし、製造工程に関する説については注意したいところがあります。
「IIIIだから必ず製造コストが下がった」「特定の鋳型を使えば廃棄ロスがほぼゼロになった」といった細かな説明まで、歴史的事実として確定しているわけではありません。
時計の製造方法は時代やメーカーによって異なるためです。
したがって、製造上の合理性は「IIII」が広まった理由の一つとして考えられるものの、唯一の決定的な理由とまでは言えないでしょう。

「IIII」は本当に見やすいのか?

もう一つ気になるのが、視認性の側面。
「IV」のほうが短いのだから、普通に考えれば「IIII」より見やすそうにも思えます。
一方、「IIII」には4本の縦線が並ぶため、時計の文字盤上では一つのまとまりとして認識しやすいという考え方もあります。
特に機械式時計の文字盤では、数字そのものだけでなく、針やインデックス、ケースの形状などを含めた全体のバランスが重要といえます。

そのため、「IIIIのほうが人間工学的に優れている」と一言で決めるのは少し難しいでしょう。

むしろ、視認性だけではなく、伝統とデザインの一体感を含めて評価されてきた表記と考えるほうが適切といえます。

「IIII」と「IV」、どちらが正しいのか?

ここまで読んで、「結局、4は『IV』と『IIII』のどちらが正しいのか」と思われたかもしれません。
答えは、長々と解説しておいて身も蓋もありませんが、どちらも時計では使われています。

一般的なローマ数字の表記としては「IV」が広く知られています。一方、時計の文字盤では「IIII」が長く使われてきました。

つまり、一般的なローマ数字のルールと、時計における伝統的な表記は別に考えたほうが分かりやすい
ということです。

これは時計以外にも見られる現象です。
歴史の中で使われてきた記号やデザインは、必ずしも現代の標準ルールだけで説明できるものではありません。時計の「IIII」も、その一例と考えると理解しやすいでしょう。

あえて「IV」を使う時計ブランドもある

もちろん、すべての高級時計が「IIII」というわけではありません。
シャネルやブシュロンなど、一部のブランドやモデルでは「IV」が使われています。また、A.ランゲ&ゾーネやノモスなどにも、モデルによって「IV」を採用する例があります。

ここで面白いのは、「IVを使っているから時計の伝統を知らない」ということではない点です。
むしろブランドによっては、現代的なデザインやミニマルな表現を重視した結果として、「IV」を選んでいると考えられます。

大まかにいえば、「IIII」は時計の歴史や伝統を感じさせやすく、「IV」は一般的なローマ数字としての合理性を感じさせやすい。
もちろん、これはあくまでデザインを読み解く一つの見方です。
それでも、同じローマ数字の4でも、ブランドによって選択が違うことを知ると、時計を見る楽しみが少し増えるのではないでしょうか。

ビッグ・ベンは「IV」を採用している

時計の「IIII」を語るとき、よく話題になるのが「ロンドンのビッグ・ベン」。ウェストミンスター宮殿の時計塔、エリザベスタワーの文字盤では、4時位置に「IV」が使われています。
世界的に知られた時計塔でありながら、伝統的な「IIII」ではなく「IV」が使われているわけです。

これも、「時計なら必ずIIII」というわけではないことを示す分かりやすい例でしょう。
なぜビッグ・ベンが「IV」を採用したのかについては諸説ありますが、明確な公式記録が残っていない部分もあり、現在でも時計好きの間でしばしば話題になります。
こうした「例外」があるところも、時計の面白さの一つです。

「IIII」を見つけたら、偽物を疑うべき?

では、実際に手元の時計を見て「IIII」となっていた場合はどうでしょうか。
まず、「IIIIだから偽物」と直結して考える必要はありません。むしろ歴史ある時計ブランドではごく普通に見られる仕様です。

ただし、逆に「IIIIだから本物」とも言えません。
この点は非常に重要です。
時計の真贋は、4時位置の数字だけで判断できるものではありません。ロゴの印刷、文字盤の仕上げ、針、インデックス、ムーブメント、ケース、シリアルナンバーなど、複数の要素を総合して確認する必要があります。

注意:「IIII」は真贋判定の材料というより、時計のデザイン上の特徴の一つと考えるのが適切です。

【まとめ】時計の4が「IIII」なのは間違いでなく、時計文化として受け継いできた証

時計の4時位置に「IIII」と書かれているのを見ると、最初は違和感を覚えるかもしれません。
しかし、調べてみると、その小さな4には意外に多くの歴史が詰まっています。

  • 古代ローマの表記にまつわる説
  • 中世の王にまつわる逸話
  • 文字盤全体のデザインバランス
  • 製造工程における合理性

どれか一つだけが「IIII」の理由だと断定することは難しいものの、こうしたさまざまな要素が重なり、時計の世界では「IIII」という表記が長く受け継がれてきました。
そして現在でも、多くの高級時計ブランドがこの表記を採用しています。

だから、もし次に時計の文字盤で「IIII」を見つけたら、「4なのに変だな」と思うだけでなく、
「なぜ、このブランドはIIIIを選んだのだろう」
と少し考えてみるのも面白いでしょう。
たった4本の「I」に見えても、その背景には時計が何百年にもわたって受け継いできたデザインや文化が隠れています。

一方で、「IV」を採用するブランドもあります。
「IIII」が正統で「IV」が間違い、という話ではありません。
伝統を残すのか、現代的な表現を選ぶのか。
その小さな違いまで眺めてみると、高級時計の文字盤は、単に時刻を表示するためのものではなく、ブランドの考え方を読み取る場所にも見えてきます。

【サイト運営者Dより】
時計の「IIII」は、初めて見ると少し不思議な表記です。
しかし、「IIII」の歴史が分かると、今まで何気なく見ていた文字盤の見え方も少し変わってくるのではないでしょうか。
もしお手元の時計が「IIII」表記だったとしても、それ自体は不自然なことではありません。むしろ、時計業界で長く受け継いできたデザインの一つです。
真贋については「IIIIかIVか」だけで判断せず、時計全体を見る必要があります。そのうえで、文字盤に刻まれた4本の「I」を、時計が受け継いできた歴史の一部として楽しんでみてください。

「ウォッチ・オーナーズ・アーカイブ」管理人:D
管理人D

「空白の腕」を持つ時計専門家。かつての苦い別れと、損なわれた名機への義憤から、現在は特定のブランドに偏らない冷徹な客観性を追求。オークションデータと機構解析を軸に、ノイズだらけのネットの海でオーナーの愛機を守る防波堤の役割を自ら担う。運命の一本を求め続けるアーカイブ・マネージャー。 運営者の思い(プロフィール全文)はこちら ≫

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